商品の変遷
BESS(創業時はビッグフット)は、1986年に創業しました。遊び心いっぱいのログハウスが最初の商品、その次に扱い始めたのが「ドームハウス」です。当初はライセンスを取得し、アメリカから輸入販売をしていましたが、その後、オリジナルで商品開発を重ねてきました。がらんどうの室内空間に水回り設備を詰めたBOXだけを置いた遊びのベースキャンプモデルや、一層目を延長し1F部分の居住性を高めた住宅向けモデルなど、新しいドーム商品を創り続けています。
発売開始からこれまでの累計実績は400棟を超えており、住宅に限らず、店舗や公共施設など、幅広い用途で利用されています。また、BESS展示場でも、住宅タイプのモデルハウスの他、接客棟や事務所を兼ねるセンターハウスとして、ドームが利用されています。今も変わらず、「BESS DOME」は、BESSブランドの遊び心の象徴的存在です。
技術開発の歴史
ドームを日本で販売するために、BESSでは、技術開発の取り組みを重ねてきました。日本の法制度への対応や居住環境の向上等、オリジナルの木造ドームへと進化させています。
元来ドーム構法は、ユニークな構法ゆえ、法律上にそのまま当てはまる項目が存在しませんでした。そのため、BESSでは独自の認定取得に向けた開発に取り組んできました。1990年には、建築基準法38条に定められた「建設大臣認定」を、1993年には、ドーム構法において国内で唯一の「一般認定」を取得しました。
その後、2000年に38条が廃止され、2007年には構造計算書偽装事件による法改正があり、再び法対応が求められることとなりました。対応を進めるうちに、世界的エンジニアリング会社のArup(アラップ)の技術協力を得て、新しい「BESS DOME」の開発に取り組み始めました。
ドームは、一般住宅の枠組みに当てはまらないため、一般住宅の次元を超え、ビル等の構造設計に使われる「保有水平耐力計算」で耐震構造を検証。新しい「BESS DOME」では、この計算手法に関わるものも含めて、特許を8件出願しており、類例のないユニークな構造となっております。
■アラップ社 概要
1946年に、サー・オーヴ・アラップにより英国に設立。ロンドンに本社を置き、建築・土木・産業施設関連の分野で、技術設計およびコンサルティング業務を展開。現在、世界38ヶ国、90の事務所に約11,000人のスタッフが勤務。
■主なプロジェクト
ドームの起源
ドームの起源は、住まいの起源、建築(Architecture)の起源にまで遡ります。人類は遥か昔より、仲間とともに火を囲み、環になって暮らしていました。住宅も古い型には、まるいものが多くあります。日本の竪穴式住居も主に円形です。世界に目を向けても、遊牧民の移動式住居パオや、チチカカ湖に暮らすインディオの葦の家、バイキングの暮らす舟形住居、中国黄土地帯の地下住居、中国南部で一族単位が暮らす客家、シリアの尖塔形の家、アフリカ乾燥地域ケニアの牛糞の家、北極圏に住むイヌイットの氷の家など、これらみんな"まるい家"です。地球上のあらゆる環境の中で、住む人の暮らしの必要性から生まれた家が、材料は異なれども"まるい形"に行き着くのは、円形が普遍的な合理性を持った形だからでしょう。
建築(Architecture)の語源は、アーチ(Arch)にあります。石を積み上げる組石造が主流の西洋において、アーチ構造は画期的な構造だったのです。そのアーチを360°ぐるりと回転させるとドームになります。ローマ帝国によって建設されたローマのパンテオンは、最初はローマの神を祀り、その後キリスト教の聖堂となりました。ビザンチン帝国によって建設されたイスタンブルのアヤソフィアも、当初はキリストの聖堂、後にイスラム教のモスクへと転用されています。ドームは各地で当時の先端技術の粋を集めて建設され、宗教を超え、また時代を超えて、その原理的でシンボリックな形態が神聖さを表徴するのに利用されてきました。
バックミンスターフラー博士
19世紀以降、建築素材として鉄筋コンクリートや鉄骨が用いられるようになり、新しい構造理論・建築形態が多く登場しました。BESS DOMEの構造のベースとなっている「ジオデシックドーム理論」もそのひとつ。1922年に建設された、ドイツ・カールツァイツ社の世界初のプラネタリウム実験ドームの構造にその原型が見られ、1949年にアメリカのバックミンスター・フラー博士が、それを「ジオデシックドーム理論」として確立しました。この理論は、従来の柱や梁、アーチといった概念を用いず、小さな三角形の組み合わせによって大きな球体構造を実現しています。これは画期的かつ合理的な理論で、現代も建築構造家たちを惹きつけ続けています。
博士は、地球を「宇宙船地球号」と名付け、宇宙的な視点から経済や社会を捉えていました。多岐にわたるユニークな理論はいずれも、この宇宙船の中の有限な資源を効率的に使用していくことが意識されていました。
"Do more with less"
最小の手段で、最大の効果を得る―この言葉を体現するジオデシックドームの中で、博士の夢は生き続けています。